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火定入滅
2018/01/06(Sat)
パンデミックによって浮かび上がる、人間の光と闇。
これほどの絶望に、人は立ち向かえるのか。


時は天平、若き官人である蜂田名代は、光明皇后の兄・藤原四子(武智麻呂、房前、宇合、麻呂)によって設立された施薬院の仕事に嫌気が差していた。
ある日、同輩に連れられて出かけた新羅到来物の市で、房前の家令・猪名部諸男に出会う。施薬院への悪態をつき、医師への憎しみをあらわにする諸男に対して反感を持つ名代だったが、高熱に倒れた遣新羅使の男の面倒をみると連れ帰った行為に興味も抱く。
そんな中、施薬院では、ひどい高熱が数日続いたあと、突如熱が下がるという不思議な病が次々と発生。医師である綱手は首をかしげるが、施薬院から早く逃げ出したい名代は気にも留めない。だが、それこそが都を阿鼻叫喚の事態へと陥らせた、“疫神" 豌豆瘡(天然痘)の前兆だったのだ。
病の蔓延を食い止めようとする医師たちと、偽りの神を祀り上げて混乱に乗じる者たち――。疫病の流行、政治・医療不信、偽神による詐欺……絶望的な状況で露わになる人間の「業」を圧倒的筆力で描き切った歴史長編。


https://www.amazon.co.jp/%E7%81%AB%E5%AE%9A-%E6%BE%A4%E7%94%B0-%E7%9E%B3%E5%AD%90/dp/4569836585
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この小説ですが元旦の函館滞在中に読了しました。
久々に読み応えある大作にめぐり合えたかんじ。
時代小説はたいがいが江戸時代を扱ってるけど、これは奈良時代が舞台です。
こうした時代小説というのは、えてしてまずストーリーありきになって時代考証がおざなりだったりしますが、
この作品は往時の街並みや情景を丁寧に描いていて、
歴史にうるさい人でも違和感なく楽しめますね。
それもそのはずで、作者は歴史学者でもある。
フィクションと史実としての時代背景がうまく融合してる。
天然痘は紀元前より、伝染力が非常に強く死に至る疫病 として人々から恐れられていました。
また、治癒した場合でも顔面に醜い瘢痕が残るため、
江戸時代には「美目定めの病」と言われ、忌み嫌われていたとの記録があります。
「もがさ」とも呼ばれていて、たしかに名前自体がどことなく不吉ですね。
幾度となく日本を襲った天然痘は、奈良時代には時の権力者であった藤原四兄弟をも死に至らしめます。
当然、市井の人たちは幼い子供も含めバタバタと惨たらしく死んでいきますが、
その過程に描かれる人間の弱さ、強さ、滑稽さが圧倒的リアルで一気に読了しました。
今も昔も本質的な面で人間は変わらないね。
やがて治療法を模索する中で一筋の光が射しこむわけですが、
こうやって人類は命を繋いできたのだと・・・
病で命を落とした人も決して無駄な死ではなかったのだと思わせてくれる希望あるラストでした。
本作品は直木賞の候補に挙がってるようで、これは納得ですね。
ずしりと響く重量級の傑作。ブログ読者様にもおすすめします。
過去には天然痘をテーマにした小説がいくつかあって、
私が個人的におすすめするのは大好きな吉村昭先生の作品です。
過去にもブログで取り上げたけど、「北星の空」「破船」「雪の花」・・・どれも傑作です。


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